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STOP! 潜水事故
CASE129 水深40m超でパニック

CASE129 水深40m超でパニック

ダイビングに限らず事故はつきものではあるが、最初から最後まで何事もなく安全に楽しめてこそ、本当のレジャー。 ダイビングの場合、潜水事故というと死に至るケースも少なくない。 そして多くの人が「他人事」と思っているフシもあるけれど、ふとした気の緩みやちょっとしたケアレスミスで潜水事故が起こることも。 明日はわが身。 もう一度基本を振り返る意味でも、ぜひこの連載を参考にしていただきたい。

CASE129 水深40m超でパニック

今回の潜水事故の原因

  • バディ不遵守
  • 身体拘束
  • 監視不十分
  • 器具の不備・取り扱い不注意
  • 体調の不注意
  • 技量の未熟
  • 気象・海象の不注意
  • エア確認不注意
  • その他

【事例】
事故者はガイド1名と他3名のダイバーの合計5名で、1本目のボートダイビングを開始した。水深40m超にいる生物を見に行くことが目的。事故者はグループ内で最も経験が浅いためガイドとバディとなり、ほかの3名のダイバーは1組でバディを組むことになった。

目的の生物を見た後すぐ、斜面をゆっくり浮上しているところでガイドが事故者に大丈夫かどうかハンドシグナルを送ったところ、事故者の返事のハンドシグナルが曖昧であったため、ガイドは事故者の手を取って一緒に浮上をした。ある程度浮上したところで、ガイドは事故者の意識が正常に戻ったと思い、手を離したところ、事故者は海底に手をついて動かなくなった。ガイドが近寄ると、ガイドのレギュレーターを奪い取るようなしぐさをしたため、ガイドは事故者に自分のレギュレーターを渡し、自分のオクトパスで呼吸をしつつ浮上を継続した。

浮上途中、事故者の目がうつろになり意識朦朧の状態に。ガイドは浮上速度を守りつつ急いで浮上していくと、事故者は今度は口からレギュレーターを外してしまった。急いでレギュレーターをくわえさせながら浮上したが、海面で事故者は意識も呼吸もなく、ボートにすぐさま引き揚げて人工呼吸を行ったところ、海水を吐いて意識、呼吸が回復した。港に連絡してすぐに救急車で病院に搬送され、なんとか命をとり留めることができた。    

直接の原因パニック

対処法

レギュレーターを外してしまっても、生きていて良かった。

目的が水深40m超にいるフィッシュウオッチングとのことだが、そもそもレジャーダイビングは水深30mまでの範囲で潜ることになっている。ダイビング教育機関のPADIやNAUIなどではスペシャルティコースのディープダイビングを履修している方は水深39mまでは可能ということになっているけれど、今回の事故者を含め、グループのダイバーたちはディープダイビング・スペシャルティを受けていたかどうかは定かではない。

でもいずれにしても、40m超にいる魚や生きものを見に行くことが目的というのはNGだ。

現実的には深場に珍しい生きものが出た!などで潜っているダイビング愛好家も少なくないようだ。
でも、もしそうであればテクニカルダイビングのディープダイビングのコースを受け、知識とスキルを身につけた状態で臨むべきだ。

この事例の場合は、事故者が望んで?またはほかのダイバーに誘われて?潜ってしまったのだから、どうすれば事故を起こさなくてすんだか、考えてみよう。

まず事故者は深場に行った時点で自分の身に何かが起きていることに気づいていなかったのだろうか? いつもどおりに動けない、視界が狭く感じられる、呼吸が苦しいといったことがきっと起きていたはずだ。ならば、運が良いことにバディはプロのガイドなのだから、その異常さを早く伝えるべきだった。伝えて対処すべきだった。

また、パニックになりそうな予感がしたら、前回、前々回と紹介したように「SBT」または「SBA」の3つの手順で、パニックから回避すること。その手順はこれだ。
1)止まる(STOP) とにかくこれ以上気持ちが焦らないように、その場にとどまる。動きを止める。このとき、どこかに着底するか、つかまれればなおよい。
2)呼吸する(BREATH) パニックになる寸前に過呼吸になる傾向が大なので、そうならないために、深呼吸に近い、大きな呼吸(大きく吸って、大きく吐く)をして、呼吸を整える。
3)考える(THINK)または行動する(ACT) 呼吸が落ち着いて、思考力がクリアになってきたら、自分はどうすればいいのか、次にどんな行動をすればいいのかを考え、行動する。

よくいわれることだが、呼吸をしようとすると息を吸うことに集中してしまい、息を吐き切れない場合が多い。そのためにより呼吸が苦しくなる悪循環、魔のループに陥ってしまう人が多い。呼吸をする場合は、息を吸うことも大事だが、意識してしっかり息を吐こう。

ところで、事故者はガス昏睡に陥っていた可能性はないだろうか?

「ガス昏睡」というのは「ガス・ナルコシス」ともいわれ、以前は「窒素酔い」と呼ばれていたが、現在は潜水医学が進み、窒素の割合は関係ないといわれるようになっている。

一般的にはダイビングで水深30mを超えるとガス昏睡を起こす場合がある。ガス昏睡が起きるかどうかは個人差があるし、同じ人でもその日の体調などによって差がある。事故者がガイドのレギュレーターを奪おうとした行動はガス昏睡が生じた可能性を物語っているように思える。

ガス昏睡は深度が増すにつれて作用が増長するといわれ、集中力や判断力を損なったり、視角や聴覚の異常、幻覚、めまい、妄想、憂鬱など人によっていろいろな症状が現れる。ただし、浮上して水深が浅くなれば、その症状は消失し、ガス昏睡中の行動や症状の記憶すらなくなる場合がほとんどだ。
事故者は深場でガス昏睡で視界が狭まり、閉塞感を覚えたことで、呼吸が乱れ、パニックに陥り、わけのわからない行動を起こしてしまったとも考えられる。

なお、事故者はガイドと緊急アセント中、ガイドからもらったレギュレーターを外してしまった。意識喪失状態で無意識に外していたようなので釈迦に説法になるが、「何が何でもレギュは外さない」という意識をいつも持ってダイビングをしてはどうだろうか。皆さんもレギュレーターは水中であなたの命を守るもの。必ずくわえておくことが大事だ。それがバディのオクトパスであっても同様だ。

まとめると、①もしパニックに陥ったらすべきこと ②ガス昏睡について知っておくこと ③レギュレーターは絶対に外さない の3点を常に頭に入れて行動する。そして、水深の限界は守ること。これに限る。皆さんも初心に帰って安全にダイビングを楽しんでくださいね。


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ダイビングは安全に潜ってこそ楽しい!
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