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STOP! 潜水事故
CASE 95 アドバンス講習中に急浮上
ダイビングに限らず事故はつきものではあるが、最初から最後まで何事もなく安全に楽しめてこそ、本当のレジャー。 ダイビングの場合、潜水事故というと死に至るケースも少なくない。 そして多くの人が「他人事」と思っているフシもあるけれど、ふとした気の緩みやちょっとしたケアレスミスで潜水事故が起こることも。 明日はわが身。 もう一度基本を振り返る意味でも、ぜひこの連載を参考にしていただきたい。
CASE 95 アドバンス講習中に急浮上
今回の潜水事故の原因
- バディ不遵守
- 身体拘束
- 監視不十分
- 器具の不備・取り扱い不注意
- 体調の不注意
- 技量の未熟
- 気象・海象の不注意
- エア確認不注意
- その他
ある年の3月のこと。
事故者はその日の2本目、最大水深25mの予定でインストラクターともう1名の講習生の計3名で、アドバンスの資格を取るために講習を受けていた。
水深25mに到達した後、水深15m付近まで浮上し、そこで水平移動をしながらバディブリージング(バックアップ空気源の使用)やレギュレーターリカバリーの練習を繰り返していたところ、事故者のフィンが急に止まった。インストラクターがすぐに気づき接近したところ、事故者がレギュレーターを外して急浮上を始めてしまった。インストラクターも追いかけ、息を吐きながら浮上したが、事故者をつかまえられず、水面で確保。近くにいた人に救助を求めつつ、水面でCPRを施しながら海岸へ移動、事故者を引き揚げた。心肺停止状態になっていたためCPR、AEDなどを施しているところへ救急車が到着。引き継がれて病院へ搬送されたが、病院で死亡が確認され、空気狭窄症と診断された。
直接の原因体調の異変 その他
対処法
診断は「空気塞栓症」なのではないかと思うのだが……。いずれにしても事故者のご冥福をお祈り申し上げます。
まずなぜ事故者の動きが止まったのか?
体調の急変が最初に考えられる。一般によくあるのは、心不全、心筋梗塞など。事故者に動脈硬化や高血圧といった持病があったのかもしれない。だが、だいぶ前に起きた事故なので明かしてしまえば、この事故者は若い方である。中高年に多いといわれる生活習慣病はまだおそらく発生する年齢ではない。
と考えると、水深15m付近で繰り返し行っていたバディブリージング、レギュレーターリカバリーで、呼吸が不規則になった可能性もあるのではないか。海水を飲んでいた可能性もあるのではないか。
バックアップ空気源(代表的なのはバディのオクトパス)を使用する時は、くわえたら息を吐くことから始めるのが基本なのだが、事故者は息を吐くことを忘れ、ひたすら吸い続けたのではないだろうか。
レギュレーターリカバリーの際もそう。リカバリーしたレギュレーターをくわえ直す時は、まず最初にすることは息を吐くこと。でも、水中でレギュレーターを外すと苦しい。そうすると人はまず息を吸おうとしがちだ。ただレギュやオクトパスをくわえてすぐに吸うと内部に水が入ってしまって飲み込んでしまうこともあるため、息を吐くことが先になるのだけれど、事故者はこれができておらず、海水を少し飲んでしまっていたり、呼吸が乱れたりしていたのではなかろうか。
水を飲んでしまって肺に水が入り込んでしまった場合、また呼吸が乱れたりした場合、意識を失うのもよくあること。それで一瞬、動きが止まり、インストラクターが近づいていった頃には、また意識が戻ったものの、事故者は「苦しい!」といきなり浮上してしまったのではないかと推測できる。
この連載では、苦しいから急浮上したという例がいくつかあるが、これも同様なのだと思う。
命が助かった方も大勢いるけれど、亡くなる方も。紙一重なのだと思うと、やはり急浮上をすべきではないという結論に達する。
急浮上をしたくなっても絶対にしない。
まずはこれを心に刻み込んでおいてほしい。
でも、どうすればこの欲求を押さえられるか?
方法は何度も書いていることだけれど、まずは冷静になることが大切だ。
そのためには
1 STOP=その場に止まる
2 BREATHE=しっかり呼吸をする。ゆっくりと大きく息を吸って吐く。気持ちが落ち着くまで何度でもやる。何度かこのゆっくり大きな呼吸をすることで、気持ちが落ち着き冷静になったと感じたら次の行動へ。
3 THINK=どうすればいいか、考える。まずはインストラクターやガイドに「不安」「怖い」といった感情を伝えて一緒に浮上してもらうか、「大丈夫」「ダイビングを続けられる」と思ったら、その旨を伝えて再び行動するか。ここの部分もインストラクターやガイドにしっかり伝えて、理解してもらうことも大事だ。
4 ACT=行動する。不安を抱えたままのダイビングはやめたほうがいいので、インストラクターやガイドに浮上したい旨を伝えること。
そして大事なことは水中では呼吸をしっかりすること。これを怠ると、パニックになってトラブルに陥ることは必至だし、事故者のように死に至ることにもなりかねない。
講習ではバディブリージングやレギュレーターリカバリーなど、トラブルに遭った場合の対処法を学ぶため、どうしても一瞬ではあるけれど、呼吸を止める練習もある。だからこそ、レギュレーターやオクトパスをくわえたら、必ず息を吐いてから呼吸を始めるという順序もしっかりと身につけていただきたい。
ダイビングは安全に潜ってこそ楽しい!
でも、万が一のとき、あなたはどうしますか??
ダイビングは安全に潜ってこそ楽しい!
でも、万が一のとき、あなたはどうしますか??
ダイビング初心者の方は、ダイビングは怖いものと思っている方も多いと思います。実際は、基本手順やルールを守って潜れば、それほど怖がることはないレジャースポーツです。
また、ダイビングは海という大自然と向き合います。
だからこそ、「水中で体験した感動は忘れられない!」、「人生を変えるほどダイビングは素晴らしい!」と感じるダイバーが多いのも事実です。
しかし、自然が相手のスクーバダイビングですから、100%安全なんてことはありません。万が一のときあなたはどうしますか?
そんな時、DAN JAPANがあなたをサポートします。
DAN JAPAN
一般財団法人 日本海洋レジャー安全・振興協会
TEL:045-228-3066
FAX:045-228-3063
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神奈川県横浜市中区本町4-43
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バックナンバー
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