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STOP! 潜水事故
CASE105 ダイビング中、息苦しくなり意識朦朧に

CASE105 ダイビング中、息苦しくなり意識朦朧に

ダイビングに限らず事故はつきものではあるが、最初から最後まで何事もなく安全に楽しめてこそ、本当のレジャー。 ダイビングの場合、潜水事故というと死に至るケースも少なくない。 そして多くの人が「他人事」と思っているフシもあるけれど、ふとした気の緩みやちょっとしたケアレスミスで潜水事故が起こることも。 明日はわが身。 もう一度基本を振り返る意味でも、ぜひこの連載を参考にしていただきたい。

CASE105 ダイビング中、息苦しくなり意識朦朧に

今回の潜水事故の原因

  • バディ不遵守
  • 身体拘束
  • 監視不十分
  • 器具の不備・取り扱い不注意
  • 体調の不注意
  • 技量の未熟
  • 気象・海象の不注意
  • エア確認不注意
  • その他

【事例】
事故者は夫と友人の4名で漁港のスロープからダイビングを開始。30分ぐらい経った頃、水深約5mでバディである夫に事故者が「息が苦しい」とサインを送った。夫が近づいてみたところ呼吸が浅くなっていて、レギュレーターを強く噛み締めていて意識が朦朧としていたので、事故者を抱いて浮上。水面を泳いで陸に搬送した。レギュレーターを外したところ浅いながらも呼吸していることを確認できたが、既に意識がなかったので、周囲の人に救急を要請。さらに人工呼吸で二度ほど口から息を吹き込んだところ、事故者の意識が戻った。到着した救急車により病院に搬送。同病院のCT及び胸部レントゲン撮影では海水吸引等は認められず、点滴投与のみで帰宅することとなった。

直接の原因酸素欠乏

対処法

意識朦朧から意識喪失となったものの、生きていて、しかも軽症で何より。事故者もパートナー(事例では「夫」)そのご主人も大変な思いをされただろうが、まさに九死に一生を得た形に。
ダイビング中「息が苦しい」とサインを出したり表現したりした後、死亡に至るケースもあるのでヒヤリとしたが、生死を分けたのは何だったのだろう? 声を大にして言いたいことは、今回の事故者はレギュレーターを強く噛み締めていて、水中で決して外さなかったこと。死に至るケースだと、たいてい息苦しくなってレギュレーターを外すという行動に出てしまうのだが、レギュレーターを外してしまうと即、海水を飲んでしまうことになり結果、溺水に。肺に水が入ってしまって死に至ることが多くなってくる。
この連載で何度も言っているけれど、「ダイビング中は絶対にレギュレーターを外さない」ということがしっかり守られたからこその生還だったといえる。 水深が約5mというのも良かったのかもしれない。すぐに水面に出られるからだ。反面、急浮上となるため、エアエンボリズムが心配ではある。水深5mあたりは水圧の変化がとても大きいところなので本来は息を吐きながら上がらなくてはいけない。でも、事故者は意識朦朧としながらも、そして浅かったものの呼吸が止まっていなかったのでエアエンボリズム(空気塞栓症)にならずにすんだものと思われる。パート-ナーの判断も素早く、行動も早かったのも良かった。 でもなぜダイビング中、息が苦しくなってしまったのだろう? 「今回の事故の原因」のところで「体調の不注意」「技量の未熟」を挙げたけれど、今回はかなり憶測だ。
ただ、ダイビング中に息苦しくなる理由として、ダイビング前の体調管理は十分だったか? ダイビング中の呼吸は意識してしっかりと行っていたか? などが考えられるので、マーキングさせていただいた次第。 体調管理に関しては、突然意識がなくなったり、姿が見えないと思ったら海底や水面で倒れていたりといった、原因がわからない潜水事故もあり心が痛いのだが、近年は中高年のダイバーに多く見られる現象なので、やはり日ごろの体調が重要なのではないかと思われる。特に「息が苦しくなる」人に多いのが、睡眠不足や風邪気味、ストレス過多などが理由であることも。若い頃は徹夜してダイビングに出かけても何も問題がなかったからと、年齢を重ねてもそのまま徹夜でダイビングをしたら……。ダイビングでは少々の無理はきかないと思って、体調も精神面も万全に整えて臨むようにしよう。 また、技量というと中性浮力とか潜降といったスキルを思い浮かべる方が多いと思うが、「呼吸」も立派なスキルいや、ダイビングでは呼吸は最も大事なスキルだと思ってほしい。
ダイビング中、感動的な生きもの(マンタやジンベエザメ、神秘の生態など)に会うと息をするのも忘れることもあるかもしれないけれど、呼吸は止めてはいけないし、何か不安なことがあると過呼吸になったりすることもあるのだが、そんな時に限って「ゆっくり吸って、ゆっくり吐く」を意識的に行うことが必要だ。
また、息が苦しい人の一番の理由は、苦しいので息を吸うことばかり考えてしまい、しっかり吐いていない、つまり肺換気ができなくなっているケースも多いので、苦しいと思ったら「息を吐く」ことも鉄則だ。 以上、ダイビング中に息が苦しくならないように、体調や精神面を整え、呼吸を意識して行うことを改めて覚えておいていただきたい。    


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