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STOP! 潜水事故
CASE112 トラブル続出で溺れる
ダイビングに限らず事故はつきものではあるが、最初から最後まで何事もなく安全に楽しめてこそ、本当のレジャー。 ダイビングの場合、潜水事故というと死に至るケースも少なくない。 そして多くの人が「他人事」と思っているフシもあるけれど、ふとした気の緩みやちょっとしたケアレスミスで潜水事故が起こることも。 明日はわが身。 もう一度基本を振り返る意味でも、ぜひこの連載を参考にしていただきたい。
CASE112 トラブル続出で溺れる
今回の潜水事故の原因
- バディ不遵守
- 身体拘束
- 監視不十分
- 器具の不備・取り扱い不注意
- 体調の不注意
- 技量の未熟
- 気象・海象の不注意
- エア確認不注意
- その他
【事例】
事故者は器材をレンタルして、ダイビングショップのスタッフ2名、ほかのゲスト4名とともにボートダイビングを開始。
潜降した際、水深3m付近でマスクに違和感を覚え、誰にも伝えずに海面へ浮上。ボートに上がるためレギュレーターを外しスノーケルをくわえてボートに設置されたはしごまで泳ぎ始めた。ところが途中でフィンが両足とも脱げてしまい、そのまま沈んでしまった。
ボート上のスタッフがこれに気づき、救助のため海へ。水深約5mで事故者を発見したものの、意識がなく、すぐにレギュレーターをくわえさせ、海面に引き上げて人工呼吸を開始した。事故者は自発呼吸を取り戻したが、そのままボートに引き揚げられた。119番通報をするとともに港へ搬送され、救急車に引き継がれた。搬送された病院の医師によると、命に別状はなく、数日の安静療養が必要との診断であった。
直接の原因溺れ
対処法
事例を見るだけで、トラブルのオンパレードだったことがわかる事故。よくいわれることだが、事故の原因はひとつだけでなく、いくつもいろいろなことが重なっておきることが多い。それが見事に当てはまったもの。事故者が命に別状がなかったことが不幸中の幸いだ。
今回の事故のポイントは大きく3つ。
1 器材レンタルの際のチェックが甘かった
2 バディチェックができていなかった
3 マイ器材ではなかった
まず1の問題。事故者はダイビング器材をレンタルしていたとのこと。
レンタル器材そのものに悪いことはない。整備もされているし、消毒もされて提供されるので、よほどでない限り問題はなかったはずだ。
借りたマスクに違和感を覚えたということは、サイズが全然合っていなかったか、ストラップをねじれていたか、髪の毛などが挟まっていて水が浸入してきたか……。
ストラップがねじれた状態で潜る、髪の毛などが挟まっていたというのは、装着ミス。マスクを装着した後もしっかりバディチェックして、ストラップのねじれ、髪の毛の状態などに問題があれば、直すことができる。つまりバディチェックがおろそかだったか、もしくはバディチェックそのものをしていなかったか。
また、仮定ばかりになってしまうが、サイズが合っていなかったとすれば、レンタルをする際の問題。購入時でなくても、マスクを選ぶ際は、ストラップをかけずに顔に直接つけて鼻から軽く息を吸うだけでなく、鼻の部分をつまんで耳ぬきをしてみたり、顔を振ったりしてみるのが大事。このことについては、マリンダイビングWeb連載「苦手スキルやダイビングの悩みQ&A」の第11回にベテランインストラクター、柏崎洋介さんが書いているのでよく見ておいてほしい。
次に2のバディチェックのこと。事故者はバディにもインストラクターにも告げずに浮上したという。ダイビングでは絶対にやってはいけない行動だ。トラブルがあった場合はとにかく誰かに助けを求めるか、誰かに知らせて浮上をすること。
そもそも浅いところからひとりで浮上することに危険がいっぱい潜んでいるもの。そのことを心に刻んでおこう。
今回の場合も誰かに告げていれば、インストラクターが浮上して確認してくれたであろうし(水深3m付近でのことだったので)、フィンが脱げそうになっても気づいてくれたはずだ。
だが、事故者はひとりで誰にも告げずに浮上する。その間にフィンが両足から外れた。
両足とも外れるというのはなかなかないことで、どれだけサイズが合っていなかったのか。またはちゃんとストラップを締めていなかったか。
レンタルのフィンとはいえ、ジャストフィットが当然。少しぐらい大きいけどいいや、という甘い考えはNGである。1の問題に戻ってしまうが、借りた時にサイズをしっかりチェックしておく必要があった。
またストラップタイプのフィンであれば、キューッと締めて脱げないように履くこと。これらもバディチェックをしていれば事故は起きなかったのではないかと思うと、悔やまれてならない。
また、もし万が一ひとりで浮上して水面に上がってしまったのなら、上がってから必ず浮力を確保して沈まないようにするテクニックも必要だった。さらに、浮力確保後、ボートにいるスタッフに声をかけて自分の存在を知らせることも必要だった。
特にフィンが脱げてしまった状態ならなおさらだ。
フィンが脱げた後に沈んでしまったということは、ウエイトも重すぎたかもしれない。適正ウエイトであれば、BCに給気しなくてもフィンの浮力がなくなって少し沈み気味にはなるかもしれないけれど、沈んでしまうことにはならないのではないか。
ここで3のマイ器材の話になるが、マイ器材を使い続けることで、器材に関するトラブルは確実に減るもの。
そのためにも、少しずつでもいい。自分の器材をそろえて、ダイビングに臨むようにしよう。
ということで、こうした事故を起こさないための対処方法は潜る前からあったわけだが、皆さま、思い当たるふしはないだろうか? ダイビングはひとつひとつの準備と手順をしっかり行ってこそ安全に潜れるもの。おそらくこの事故でほかのダイバーの方はすぐにボートに上がらなくてはならなくなったと思う。
ほかのダイバーに迷惑をかけないためにも、自分に合った器材を、しっかり身につけて潜るようにしよう。自分に合った器材を求めるならマイ器材を持つことも、事故から自分を助けるための重要な手段だ。
Good luck and Good dive !!
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バックナンバー
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