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STOP! 潜水事故
CASE119 【考察】ドリフトダイビングの危機対処法
ダイビングに限らず事故はつきものではあるが、最初から最後まで何事もなく安全に楽しめてこそ、本当のレジャー。 ダイビングの場合、潜水事故というと死に至るケースも少なくない。 そして多くの人が「他人事」と思っているフシもあるけれど、ふとした気の緩みやちょっとしたケアレスミスで潜水事故が起こることも。 明日はわが身。 もう一度基本を振り返る意味でも、ぜひこの連載を参考にしていただきたい。
CASE119 【考察】ドリフトダイビングの危機対処法
今回の潜水事故の原因
- バディ不遵守
- 身体拘束
- 監視不十分
- 器具の不備・取り扱い不注意
- 体調の不注意
- 技量の未熟
- 気象・海象の不注意
- エア確認不注意
- その他
※今回は個別事例を挙げていませんので、
直接の原因漂流
対処法
2023年6月19日(月)に沖縄本島の糸満沖で起きた7人のダイバーの漂流事故については、精査が必要なのでここで紹介するものではない。でも「ドリフトダイビングで漂流事故」というワードが独り歩きしてドリフトダイビングがあたかも危険なものといった報道の捉え方はいささか私たちダイバーの常識とは異なるのではないか。今一度ドリフトダイビングとはどのようなダイビングなのか。その魅力や安全に行うための心構えや万が一、ドリフトダイビングで流された場合どうすれば良いのか、考えをまとめておきたい。
【ドリフトダイビングとは】
ドリフトダイビングはダイビングスタイルのひとつとして多くのエリアで行われており、主にボートダイブで行われる。
ドリフトというのは英語のdriftから来ていて、漂う、漂流する、漂流させる、転々とする、ゆっくり動くなどの意味を持つ。ボートダイビングのスポットが開拓されるにつれ、アンカリングしたりブイに係留したりしてボートを留めておいて、その地点でエントリーし、水中を楽しんだ後、元の位置に戻って浮上する「アンカリングダイビング」がある。このスタイルだと流れに逆らってボートに戻るという、結構不都合なこともしばしば。ならばエントリーしたダイバーをボートが移動して水面に浮上したところで拾えばいいではないかと、「ドリフトダイビング」が誕生した。
ドリフトダイビングの魅力は、ボートからエントリーして潮の流れに身をゆだね、移動しながら水中景観や魚の群れなどを楽しむことができる。ダイバーは流れに逆らうことなく、ラクに進める上、浮上すればボートが迎えにきてくれるので、脚力の弱いシニアや女性ダイバーには特に人気となり、ビギナーダイバーでも楽しめるダイビングスタイルである。
流れる、流されるといっても、基本的にダイビングスポットとして開拓されているところはダイバーには無理がなく、ある程度フィンを使って泳がないと先に進めないぐらい、緩やかな流れのスポットが大多数。時には流れが強くなる場合があるスポットもあり、「ドリフトダイビング」と一口に言っても、いくつかのパターンがあるのだ。
つまり「ドリフトダイビング=上級者=危険が伴う」ということではない。ビギナーでも十分楽しめるスポットもあれば、流れが速く上級スポットとしているところもあり、そこはダイビング経験本数を50本以上、100本以上といった条件が設けられたりもしている。
【ドリフトダイビングを安全に行うための注意点】
アンカリングダイビングに比べて、ドリフトダイビングではボート上の誰か(ボートキャプテンや責任のあるクルー)がダイバーの動きを常に監視している必要がある。一定方向にしか潮が動かないようなスポットであれば、上がってくる場所の見当もつきやすいけれど、潮流という自然はいつなんどき変化するかわからない。船上の監視者がダイバーの泡を追いかけてダイバーがどう動いているかを見ておくという配慮が徹底されている必要がある。
ガイドとボートキャプテンの事前の打ち合わせが徹底していることも必須事項となる。また、ボートの操縦席も低いところよりは高いところ(「ブリッジ」などと呼ばれる)からのほうが監視しやすい。
以上は事業者にとっての注意点になるが、ではダイバーとしてドリフトダイビングに必要なスキルはあるのか?
まず潜降は、アンカーやブイがかけられない場合もあるので、フリー潜降(ロープなどに頼らずに潜降)できること。またドリフトダイビング中は中層を進むことが多いので中性浮力がとれること。また、ドリフトといっても時には流れに逆らう場面に合うこともあるため、最低限、脚力があること。脚力に自信がない方でも、自分の脚力に合った、推進力の大きなフィンを利用すればいい。
いずれも基本スキルなので、ダイバーとしては身についていて当然なのだが、自信がない方はこれを機にスキルアップを意識するといいだろう。
さて、実際にドリフトダイビングでゲストであるダイバーが注意すべきことは、
1) ブリーフィングをしっかり聞いておくこと。
コース取りや見どころだけでなく、ダイビング中の注意点、万が一はぐれてしまった場合の対処法(1分間その場で待つ。誰かが見つけてくれなければ浮上速度を守って水面に上がる。上がる前に安全停止をしなくてもいいのか、してから上がるのか。上がったらセーフティフロートを上げるなど)を必ず聞いておく。
2) 万が一流された時のためにセーフティグッズを携行しておくこと。
グループ全体で予定していた流れとは異なる方向に流れてしまい、浮上したらボートが見えないといったことも想定されるが、グループからはぐれて一人、またはバディと二人だけ流されてしまうという可能性もある。そんな時には浮上後、少しでも早く自分たちの位置を見つけてもらうためにセーフティフロート(ソーセージ型ブイ。よく言われる「シグナルフロート」はBBCの商品名)をはじめ、いろいろなセーフティグッズ(エマージェンシーグッズともいう)をBCのポケットなどに入れておくことが必要だ。
3)水中ではガイドとできるだけ同じ水深、同じコースをついていくこと。
流れが緩やかな場合は、見える範囲で動いてもいいとは思うが、流れが速い場所やアップカレント、ダウンカレントが発生するような場所ではガイドについていくのは絶対だ。たった1m離れただけで、全然違う流れが入っていて、戻ろうと思ってもなかなか戻れなくなることもある。それでパニックになって流されてしまうケースもあるので、くれぐれも注意が必要だ。
基本的にガイドは流れがハードではなく泳ぎやすい場所を泳いでいるので、それを外れるとなぜかアゲンストの流れ(逆流)に合って、泳ぐのもツライ場合だってある。ドリフトダイビングの際はガイドと同じ水深、または少し上を泳いでいくようにしよう。
4)浮上し始めて安全停止の時も要注意。
見えるからといって離れていると、ガンガン離れてしまう潮につかまることも考えられるからだ。近くで安全停止をすること、
これは浮上後、ボート待ちをする際も同様で、浮上したらBCに空気を入れ浮力を必ず確保して、ガイドのそばに近寄って、待つこと。
【万が一流された場合の対処法】
ダイビング中、または浮上後、他の人たちから離れて流されてしまったら? 迷子になってしまったら?
ダイビング直前のブリーフィングの際に紹介された手順で浮上して、海面に上がり、浮力を確保した上でまずセーフティフロートを上げる。
グループで流されている場合やバディと二人で流されている場合は、個々がバラバラにならないように固まっているといい。例えば他の人のフロートは立てておいて、一人のフロートとそのロープにみんなでつかまっておくとか、ロープがふんだんにある場合は、BCなどにそのロープを通すようにして、バラバラにならないようにするとか。そのほうが捜索しているボート等からは大きく見えるので見つけやすいからだ。また見つかった際に、救助もしやすい。
また、「ビーコン」と呼ばれる通信が可能な機器があればかなり役立つ。これはボートとダイバーが双方で利用するもので、ダイビングサービス(特にダイブクルーズ船)でダイバーに貸し出している場合もある。周りに陸がない、ほかの船もいないような絶海の孤島でダイビングをする場合に貸し出されたことがあるのだが、持っていると安心ではある。
沿岸でのドリフトダイビングで漂流した場合は、携帯電話を専用のケースに入れて携帯しておくのも有効だろう。
漂流している時間が長くなってきて、でも近くをボートやヘリコプター、航空機が通ったりしたことを想定すると、ミラーで光を反射させることで見つけてもらえやすくするという方法もある。ただし太陽の光がないと使えないものではあるけれど、光をキャッチすれば2kmぐらいは届くので、小さなものだし、持っていると便利だ。
光といえば、流されたダイバーが捜索する航空機に向かって水中カメラのフラッシュをたいたことで見つけてもらえたという例もある。持っているものはなんでも有効に使おう。
なお、漂流して長時間流され、救助されたダイバーたちの後日談では、励まし合う、明るく振る舞いネガティブにならないといったことでモチベーションが保てたという。グループの場合はそれでやり通してほしいが、一人で漂流した場合も後ろ向きにならないで明るく”必ず見つかる“と信じていてほしい。
いずれにしても流されないことが一番大切ではあるが。
ドリフトダイビング=上級者=危険といったことは一概には言い切れず、ドリフトダイビングの良いところや魅力もたっぷりあるので、事前の知識や安全グッズを携行するなどの対策をしっかりとって楽しんでほしい。
2023年の新製品情報でも紹介している通信グッズがあるので参考にしていただきたい。
またセーフティフロートは上げ方を知らなければ危ないだけ。
「セーフティフロートの上げ方」特集も併せてご覧ください。
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バックナンバー
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- CASE119 【考察】ドリフトダイビングの危機対処法
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