- ホーム
- 安全ダイビング
- STOP! 潜水事故
- CASE56 魔のトリプルトラブル
STOP! 潜水事故
CASE56 魔のトリプルトラブル
ダイビングに限らず事故はつきものではあるが、最初から最後まで何事もなく安全に楽しめてこそ、本当のレジャー。 ダイビングの場合、潜水事故というと死に至るケースも少なくない。 そして多くの人が「他人事」と思っているフシもあるけれど、ふとした気の緩みやちょっとしたケアレスミスで潜水事故が起こることも。 明日はわが身。 もう一度基本を振り返る意味でも、ぜひこの連載を参考にしていただきたい。
CASE56 魔のトリプルトラブル
今回の潜水事故の原因
- バディ不遵守
- 身体拘束
- 監視不十分
- 器具の不備・取り扱い不注意
- 体調の不注意
- 技量の未熟
- 気象・海象の不注意
- エア確認不注意
- その他
事故者はほかのダイビング客25名とインストラクター3名でボートダイビングを実施。1本目はゲストが2グループに分けられ、事故者は12名のダイバーと1名のインストラクター、現地のガイドダイバー1名の計14名でダイビングを開始した。
潜降後、約40m先の根に移動する際、インストラクターが事故者の残圧を確認したところ、110気圧であったことは確認している。
根の周りでフィッシュウオッチングをし、そろそろ他に移動しようとインストラクターが見渡したところ、事故者がいない。付近を捜索したところ、十数m離れたところで事故者を発見。事故者は意識がなく、持っていたカメラが根の割れ目に挟まった状態だった。
インストラクターや現地ガイドが事故者をボートに引き揚げ、CPRを施しながら港へ。要請していた救急車が来ていてすぐに搬送されたが、病院で死亡が確認された。
直接の原因溺れ エア切れ
対処法
事故者にはご冥福をお祈り申し上げます。
……なのだが、突っ込みどころ満載の事故である。
まず1名のインストラクターと1名の現地ガイドにつく人数は適当だっただろうか?
この場合、海を案内する人が2人いるので、12名であればぎりぎりセーフではある。
ファンダイブのガイディングはガイド1人につき6名ぐらいまでが理想とされるからだ。
けれど、14人が一度に潜ったとしたら、先頭の人から最後尾までいったいどれぐらいの距離になるだろう? 相当透明度がいい海であれば最後尾の人まで見えるだろうが、先頭のガイドが魚を見せてくれたとしても、真ん中ぐらいの人からは何を指しているかもわからずじまいで、最後尾の人がその魚のところまで行ったとしても、魚は穴に引っ込んだり逃げたりしてしまっているはず。不幸である。
こうした大人数で潜らなければならなかったことが第一のトラブル。
大人数で潜る場合、先頭を行くインストラクターまたはガイドはともかく、
最後尾につくインストラクターまたはガイドは、ゲストたちの動向をウオッチングすることが一番の仕事。
ところが、実際には事故者のように行方不明者が出ているということは、
その人がするべき仕事をしていなかったということ。
これが第二のトラブルだ。
そして事故者。
カメラを持っていたということは、グループから離れたところで撮りたいという願望もあったのだろう。
当日の透視度はわからないのだが、実際には十数mしか離れていない所で見つかったわけだから、透視度は10mもなかったと考えられる。
少しぐらいならグループから離れてもいいかなという軽い気持ちで事故者は離れ、そして写真を撮ろうとしたところでカメラが岩に挟まってしまったということか。
体が岩に挟まってしまったわけではないのだから、刻々とエアがなくなっていったとしたら、カメラなんて諦めてまずは生き残ることを考えるべきだった。
そもそも潜降して根に移動する頃に110気圧しかなかった……ということは、空気消費量がよほど多い人だったのか、最初からタンクの残圧が足りていなかったのか。
これが3つ目のトラブル……しかも重大な死亡事故を引き起こしたことは想像に難くない。
いずれにしても事故者が岩に挟まって抜けないカメラを取ろうとして焦り、エアがどんどんなくなり、過呼吸になり、パニックに陥った可能性は大。
重篤な潜水事故というのは、いくつものトラブルが絡んで起こるといわれる。
だから、事故を起こさないためには、ちょっとしたトラブルも起こさないように注意を払うことが大切。
グループ割りは適当か。
インストラクターやガイドたちがすべきことを理解して、お互いにコミュニケーションが取れているか。
これらは私たち一般ダイバーがすべきことではなく、業者側がすべきこと。
業者がすべきことをしていないのであれば、ダイバー側から物申すべきだと思う。
次に事故者。
大丈夫だろうという、ちょっとした油断や心の隙が大きな事故を招くことだってある。
まず潜る前の空気量チェック。普通は200気圧、少ない所でも150気圧はある。
次に事故者はグループから離れるべきではなかった。
また岩にカメラが挟まって動かなかったのなら、インストラクターなどを呼びに行って、手伝ってもらうという手段もあったはず。
残圧の確認もしっかりすべきだった。
過呼吸からパニックにならないように、落ち着いて呼吸をし、グループに戻るべきだった。
今回はまさに魔のトリプルトラブル。危機から脱するためには、
基本に立ち返ることこそが大切だ。
ダイビングは安全に潜ってこそ楽しい!
でも、万が一のとき、あなたはどうしますか??
ダイビングは安全に潜ってこそ楽しい!
でも、万が一のとき、あなたはどうしますか??
ダイビング初心者の方は、ダイビングは怖いものと思っている方も多いと思います。実際は、基本手順やルールを守って潜れば、それほど怖がることはないレジャースポーツです。
また、ダイビングは海という大自然と向き合います。
だからこそ、「水中で体験した感動は忘れられない!」、「人生を変えるほどダイビングは素晴らしい!」と感じるダイバーが多いのも事実です。
しかし、自然が相手のスクーバダイビングですから、100%安全なんてことはありません。万が一のときあなたはどうしますか?
そんな時、DAN JAPANがあなたをサポートします。
DAN JAPAN
一般財団法人 日本海洋レジャー安全・振興協会
TEL:045-228-3066
FAX:045-228-3063
Email: info@danjapan.gr.jp
https://www.danjapan.gr.jp/
〒231-0005
神奈川県横浜市中区本町4-43
A-PLACE馬車道9階
バックナンバー
- CASE133 ダイビング中、耳元で何かが炸裂!
- CASE132 ボートダイビングでラダーに指を挟み大けが
- CASE131 アンカーが外れ漂流。そして行方不明に
- CASE130 他のダイバーと接触しレギュが外れてパニックに
- CASE129 水深40m超でパニック
- CASE128 振り向いたらバディがレギュを外して暴れていた
- CASE127 インフレーターが外れてパニックに
- CASE126 バディを見失いパニックに
- CASE125 二日酔いで潜ってケガ
- CASE124 オクトパスブリージングでパニックに
- CASE123 仲間とはぐれ陸で倒れていた
- CASE122 残圧確認がいい加減でエア切れ
- CASE121 ウエイト調整ができずに急浮上
- CASE120 スノーケリング中に海水を飲んで意識不明
- CASE119 【考察】ドリフトダイビングの危機対処法
- CASE118 初心者が緊張と疲労で過呼吸に
- CASE117 勝手に浮上して漂流
- CASE116 緊張すると口がこわばる癖から海水誤飲で意識不明
- CASE115 ダイビング器材の不具合が原因で溺水!?
- CASE114 セルフダイビングではぐれ…。くも膜下出血で帰らぬ人に
- CASE113 岩をつかみそこねて流される
- CASE112 トラブル続出で溺れる
- CASE111 ブイのロープに急変! そのとき
- CASE110 リーフカレントにはまり漂流
- CASE109 突然レギュレーターを外してパニックに
- CASE108 60代男性ダイバーがダイビング中に体調不良に
- CASE107 ディープダイビングで減圧症の疑い
- CASE106 大物出現!で猛ダッシュするも取り残されてパニックに
- CASE105 ダイビング中、息苦しくなり意識朦朧に
- CASE104 講習中に海水を誤飲
- CASE103 ディープ潜水で減圧症に
- CASE102 ボートと接触
- CASE101 フィンを履く時に転倒して溺水
- CASE100 エア切れで定置網に絡まる
- CASE 99 レギュ故障で緊急浮上するも
- CASE 98 エントリー後行方不明に
- CASE 97 繁忙期のダイビングでパニック
- CASE 96 バラバラにエントリーしてロスト
- CASE 95 アドバンス講習中に急浮上
- CASE 94 冬の海で体調異変
- CASE 93 短すぎる水面休息で減圧症
- CASE 92 顔色が悪かったのにダイビングを開始
- CASE91 浮上後、大波でパニックに
- CASE90 あっという間にエアを消費して…
- CASE89 久しぶりで緊張のあまり…
- CASE88 ダイビングボートが座礁
- CASE87 タンクのバルブの戻し過ぎ
- CASE86 うねりで顔面強打
- CASE85 水深28mでの水中撮影後、減圧症に
- CASE84 冷水海でフリーフローが仇となり…
- CASE83 空気がBCに入らず溺水
- CASE82 無理矢理ダイビングをして漂流
- CASE81 冬の海で意識不明に
- CASE80 ダイビング後、頭痛が止まらない
- CASE79 レギュが外れ、パニック!
- CASE78 水面移動が危ない!
- CASE77 体験ダイビングで絶対してはならないこと
- CASE76 透視度3mでバディとはぐれ、漂流
- CASE75 偽ダイバーのダイビング事故
- CASE74 指示を守らず漂流
- CASE73 潜水後ろれつが回らない
- CASE72 洞窟で迷子に
- CASE71 浮上中、異常行動
- CASE70 ツアーダイブで単独行動
- CASE69 乗っていたボートが転覆
- CASE68 助けてくれたバディが事故に
- CASE67 朝まで飲んで潜ったら
- CASE66 水中で大笑いしたら、海水が!
- CASE65 スノーケリングで溺死
- CASE64 オーバーウエイトと過呼吸でパニックに
- CASE63 母子ダイビングでロスト
- CASE62 ボートのへりから落下
- CASE61 ドライパニック
- CASE60 生活習慣病てんこもりの人が20年ぶりに潜ったら……
- CASE59 突然のめまい
- CASE58 マスク脱着訓練中に急浮上
- CASE57 潜水中にスノーケルをくわえ…
- CASE56 魔のトリプルトラブル
- CASE55 浮上後、レギュを外したダイバーに危機が
- CASE54 セルフダイブで別行動の末……
- CASE53 エグジットの際、うねりで骨折
- CASE52 突然姿を消したダイバーが水中で倒れていた!
- CASE51 大量のエアを吐き体調不良に
- CASE50 病後のダイビングで潜水病に
- CASE49 リーフカレントで戻れず漂流
- CASE48 ウエイトを1kg外したら…
- CASE47 フィンが外れて焦ったあまり…
- CASE46 エンジンがかかっているボートに接触
- CASE45 ダイビング中、差し歯が抜けた!
- CASE44 ダイビング中、呼吸困難
- CASE43 うねりで顔面強打
- CASE42 浮上後、意識朦朧に
- CASE41 タンクのバルブ開け忘れ
- CASE40 潜降中に行方不明
- CASE39 咳き込んで海水を飲み、パニックに
- CASE38 ダイビング中、低体温症に
- CASE37 カメラが岩に挟まってエア切れに
- CASE36 ダイビング中に天候急変、浮上後流される
- CASE35 フリーフローと溺れ
- CASE34 1月の海で減圧症
- CASE33 撮影に夢中になりエア切れ
- CASE32 エアの早い友人を先に上げてダイビングを続行し、漂流
- CASE31 ドライスーツ着用でパニックに
- CASE30 フィッシュウオッチング中にパニックに
- CASE29 ダイビング中に気分が悪くなり病院搬送
- CASE28 エア切れで漂流
- CASE27 海洋実習中、海水を飲み込み、死亡
- CASE26 BCに空気が入らずパニックに!
- CASE25 6月、北の海で70代女性が意識不明に
- CASE24 マスクに海水が浸入して大パニック!
- CASE23 水深40mを潜り、減圧症の疑い
- CASE22 BCに空気が入りっぱなしになり急浮上
- CASE21 浮上したら係留していた船がいない!
- CASE20 水深35mでパニックに
- CASE19 残圧がなくなり一人で浮上し、死亡
- CASE18 ナイトダイビングで帰らぬ人に
- CASE17 フリーフローでエア切れに
- CASE16 レギュレータークリアに失敗して・・・
- CASE15 ロープ潜降で1人行方不明に
- CASE14 初めてのダイビングでパニック
- CASE13 一人セルフで帰らぬ人に
- CASE12 ボートダイビングで移動中に骨折
- CASE11 ダウンカレントにつかまり気づけば-40m超
- CASE10 エアがない!→パニックに
- CASE9 ダイビング中に心停止
- CASE8 海中で咳込んでパニック→急浮上
- CASE7 浮上後、体が痺れて目の前が真っ暗に
- CASE6 ボートから逆方向に流され13時間漂流
- CASE5 エアがなくなったダイバーに突然オクトを奪われパニック
- CASE4 水中で迷子になり、死亡
- CASE3 持病を隠して潜水中、突然の体調不良で失神
- CASE2 マスククリアができずパニック!
- CASE1 ダイビング中に息苦しくなり意識不明に